国の特別天然記念物トキのひなが国内の自然界で36年ぶりに誕生したニュースで、細野環境相は記者会見でトキのひな誕生を喜びつつ、生物多様性について「非常に根源的な環境問題。文明国として大事にしたい」と述べた。
まあ喜ばしい話に水を差すつもりはないが、1年経っても未だに放射能を撒き散らしている福島第一原発を思うにつけ、政府高官の口から出る「環境、文明」との言葉が何と空虚で嘘っぽいことか!
環境省によると、国内の動物はこれまでに46種絶滅し、今も1002種がその危機にひんしている。環境省は種の保存法に基づき、そのうち人の活動の影響で生息が著しく脅かされている90種を「国内希少野生動植物種」に指定し、捕獲や売買、生息地の開発の禁止といった保護対策を講じていると言うが、年間予算がたった約4億円しかないため、トキやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギなどを除く約半数については「限られた予算で、増殖が見込めない」として計画すら立てられていない。1機約190億円の次期主力戦闘機F35を1機減らすだけで、何種類の動物が絶滅から救われることか?
戦闘機は墜落しても金さえ出せばまた補充できる。しかし「目先の金儲け」からすれば邪魔にしかならないような、絶滅を危惧されている動物にせよ、歴史的文化的遺産などは、いちど消えてしまえば二度と甦ることはない。その価値を認め保護することが「文明国」としての出発点ではないのだろうか?
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島に生息するセンカクモグラは歯が38本で日本本土で生息しているモグラより4本少ないのが特徴。79年に1匹捕獲されて以来、生存が確認されていないが、保護対策は取られていない。中国・台湾との領有権問題で上陸すら困難だからだ。
沖縄県名護市辺野古の沖合に生息するジュゴンにいたっては、国際自然保護連合(IUCN)が日米両政府に再三保護を求めているのに、指定していない。普天間移設計画の下心があるからだ。
他国との争いや基地増強の犠牲は、ジュゴンやセンカクモグラばかりではない。いや、むしろ沖縄・福島県民の犠牲だけではおぼつかなくなり、増税・軍備増強・原発再稼働で、もっと多くの日本国民を「絶滅危惧」の瀬戸際に追いやろうとする「非文明国」の政治の象徴なのかも知れない。
(毎日新聞 2012年05月06日の記事を参考にさせて頂きました)
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